今まで使っていたエプソンの VP-80 プリンターが不調 になってきた。とりあえず修理に出さなければならないが、 その間困ってしまうので、これを機会にLBP(レーザプリンター) の導入を検討することにした。
LBP も100万円以上していたのが、最近はようやく50万円 以下になってきてそろそろ踏み切り時のようでもあり、 どうしようかと迷っていたところである。
どうせなら PostScript の載るまで待とうかとも思ったが、 もし近いうちに出たとしても、当分はそう安いはずはないことに 気づいた。
もっとも実績があると思われるのは Canon の LASER SHOT だが、 最近発表された京セラの L-880 もコンパクトな感じで 悪くはなさそうに思っていたところへ、丁度タイミングよく 「京セラの LBP をテストしてみませんか」との電話があり、 渡りに舟で早速使わせてもらうことにした。 聞いてみると京セラのものは、すでにヨーロッパなどへ輸出の 実績のあるものなのだそうだ。
何せ本来はソフト屋でもハード屋でもない素人で、いつも UNIX へ新しいペリフェラルを接続するときはかなり苦労するのが常 なので今回も SUN-3 との相性がちょっと心配だったが、 接続はなんなく行って今までのドットインパクトタイプの プリンターに慣れたものにとって、ウイーンと微かにうなる 音とともにスルスルと音もなく紙が吐き出されてくるのは、 ちょっとした感激の一瞬だった。
見ていると印刷速度はそうべらぼうに速いとは思えないのだが、 大きなドキュメントをプリントしてみると、ちょっと何かを やっている間にいつの間にか終わっている。まったく、あっけないほどである。
プリンターへ何かを出力するときは UNIX では通常 lpr コマンド を使うが、emacs の中からも読み込んだファイルの全部あるいは 一部を lpr で出力できるのは極めて便利である。
特に mail や news を読んでいるときにこれをやると大変能率的で、 これに勇気を得て今まで余りにもボリュームが多くて読むところに ならなかった JUNET の各種手引きを一気にプリントアウトしてしまった。
LBP の弊害の一つはとにかく余りにもあっけなく大量のドキュメント をプリントアウトできるものだから、ちょっとしたものでも見境なく 手軽にプリントアウトしてしまうことで、高級紙屑発行機となって しまう可能性が高い。
用紙は通常コピー用紙を使うが、したがって以前ここに書いたように 要らなくなった裏紙を A4, B5 とサイズ別にとっておき、 これをカセットにセットして使うというケチケチ作戦がますます 意味を持ってくることになった。
結論をいうと、この後 Canon の LASER SHOT も借り出して比較 した結果、結局は LASER SHOT を入れることにしたのだが、 その理由にこれと言ったものはなく、単に現時点では Canon の 方が画面のダンプなどユテイリテイーがそろっているとうだけの 理由で、京セラのものもなかなか悪くないと思う。
特にゴシックのフォントは京セラのものの方がそれらしく、 スライドや OHP の原稿を作るには便利で捨てがたいところだった。 場所をとられるのはご免なので、LASER SHOT は B4 でなく A4 サイズを出力するタイプにしたが、外形のサイズはどちらも たいして変わらず、専有面積という点からすれば京セラの L-880 の方がやや小さい。
ただし私のように折り目の入った古い紙を使う場合、 京セラのものでは紙づまりを起こすことが時々あったが、 Canon ではほとんどないのはさすが複写機メーカーだけあると 感じた。
現在使っている SUN の日本ご用にインプリメントした システムである JNIX では漢字コードは EUC で扱われるが、 printcap の中で漢字変換のフィルターを設定しておくと、 lpr でプリンターにコードを送る際に、そのフィルターで JIS へ自動変換してくれる。LASER SHOT は JIS コードを 受け付けるようになっているので、これでうまく印字できる という仕掛けである。
私の仕事場には SUN と PC-98 それに Mac が置いてあるのだが、 PC-98 はセントロ、SUN は RS-232C、Mac はそれ専用の イメージライターとそれぞれ仕様の異なった3台のプリンター を置かねばならない。そこで今までは SUN の方はプリンター を我慢し、どうしてもハードコピーをとりたい場合は PC-98 のターミナルエミュレータを利用して、PC-98 の プリンターへ打ち出していた。
しかし京セラでも Canon でも PC-PR201H のエミュレートモード が使えるので、PC-98 と SUN のプリンターは1台で済むことに なった。しかも LASER SHOT ではケーブルを PC-98 と SUN に常時接続しておいて、電源を入れる際のスイッチの押し方 ひとつで、どちらでも好きな方のモードで立ち上がってくれるので 大変便利である。
ご存知のように Canon は Mac をも扱っており、最近 LASER SHOT を Mac 対応にしたものも出したようである。 しかし現状では仕様は Mac 用に固定されていて PC-98 のプリンターと兼用はできないそうだが、販売店の話では いずれカートリッジで Mac のモードをも選べるようなものも 出るらしいので、そうなれば 3台のコンピュータが1台の LBP を共有するという大変好ましい状況になる。
とにかくプリンターという代物はコンピュータ本体よりも 場所を食うし、上に物を重ねておくこともできないので 始末におえないが、これで部屋の中も整理できるというものである。
さらに欲を言わせてもらえば、LBP も縦置きにできるとか、 最近の VTR やオーデイオ機器のように箱形にして前面のみで コントロールできるようにし、上に他の機器を重ねられる ようになればもっと良い。紙づまりを起こした時それを取り除くには 引き出し式に手前にスライドできるようにすれば良いだろう。
LBP を使った印象では、一度これを使ったらまずやめられない というのが本当のところである。しかし LBP だけでは困ることも あるような気がする。
というのは、私の所でいえば給与支給の際、通常はヒサゴで 出している給与袋に明細を印刷しているのだが、この場合袋の 上に印字すると袋の表には職員の名前と日付しか印字されない のだが、複写式になっている袋の内側にはちゃんと明細が 印刷されるようになっている。これが LBP ではできない。
また途中まで印刷された紙を挿入して、その途中から印字 させるような芸当も LBP では難しい。
もちろんそれなりのソフトを作れば可能だが、 少なくともドットインパクトプリンターのように手動で 好きな位置まで紙送りをし、そこから印字させるような訳にはいかない。 LBP には LBP なりの使い方を工夫するべきかも知れない。
ほめてばかりいては何なのでという訳でもないのだが、 最後にひとつ Canon に苦言を呈するなら、マニュアルの整備が イマイチで、フォントの設定についてマニュアルを最初から 最後までなめるように読んでみたが、まったく記述されていない 部分があり、いつものようにアドベンチャーゲームと相成った。
それからもうひとつ Canon に注文は、できれば将来 PostScript 対応のものを出す際は、ボード交換あるいは増設程度で 従来の LASER SHOT をPostScript 対応にグレードアップできる ように是非して欲しい。