ドクター、ワークステーションと暮らす (5)
1991-09 大橋克洋
< 1991.08 待ちに待った NeXT の日本語OS | 1991.12 UNIX と Macintosh OS の共通点 >
NeXTに待望のFAXモデムを繋いだ。abaton の InterFax というやつで、 以前からMac用のものが出ているがこれをNeXT用にしたものだ。Macと共用でき ると有難いのだが、残念ながらNeXT専用となる。キヤノンからやがて正式に発 売になると聞いているが、待ち切れずにある筋からの借していただいたもの。
FaxModemとは読んで字のごとし、FAXを受信したり送信することのできるモデ ムで、紙でやりとりするかわりに受信したFAXをビットイメージとしてコンピュー タに取り込んだり、コンピュータの中の文字や絵をFAXとして送ることができ る。届いたFAXは画面で見ただけで捨ててしまえるし、必要なものはレーザー プリンターで紙に印刷もできる。画像ファイルとして保存できるのだが、かな りスペースを食うので、見た後は極力捨ててしまうことにしている。
接続は至って簡単。Mac用シリアルケーブルでNeXTとFaxModemを接続 する。NeXTのシリアルポートはAとBがあるが、これらの仕様は微妙に違ってい る。注意する点は、Modemを接続するには Port Aを使うのに対し、FaxModemは Port Bに接続しなければならないこと。
次にPrintManagerを使ってこれをNeXTから認識できるようにする。 NeXTならではの容易さでパネルの中から必要な項目を選択して設定するだけ。 ほとんどバカチョンである。
設定を終えたら、早速使ってみる。どのアプリケーションでもよい、 メニューから「印刷」を選択すると印刷用のパネルが開くが、ここで「印刷ボ タン」のかわりに「FAXボタン」をクリックする。すると今度は「FAXパネル」 が開くので、送付先の電話番号をタイプして、「FAXボタン」をクリックする だけである。このパネルの中で送付先の名前と電話番号を登録できるので、次 回からは電話番号リストから必要なものをクリックするだけとなる。FaxModem は直ちに先方のFAX番号をダイアルして呼び出し転送してくれる。
NeXT にレーザープリンターを接続していない、あるいは何らかの事 情で使用できない場合は、FAXを簡易プリンターとして使うことができる。 200*200dpiで出力できるので、結構奇麗である。一方、別のFAXからイメージ を読み込んでFaxModemで受けてやればイメージスキャナの代用になる。
FAXにはカバーページすなわち送り状をつけられる。標準では英文の ものが用意されているが、自分用にモデイファイしたものを用意しておけば日 本語も使えるし、好きな絵などを貼り付けたカバーページを作ることもできる。 マルチフォントが使えるので、洒落たものを送ることができる。
一方、受信したFAXはFaxReaderで読んだりプリントアウトできる。 WorkSpaceManagerのPreferenceにより、login すると同時にFaxReaderをバッ クグラウンドで走らせておくようセットしておけば、FAXが届いた時に FaxReader のアイコンが紙を吐き出した絵に変わる。FaxReader の中の到着文 書リストをクリックすると、その文書を画面で見ることができる。勿論これを プリント出来るのだが、一定以上の大きさになるとそれ以上の部分が切れてし まうのがちょっと困る。仕方がないのでそのような時は、これを Edit や JDraw などイメージを扱えるプログラムにカットアンドペーストしてプリント アウトしている。
この手法を使って便利なのは、届いたFAXの必要な部分を切りとって Editにペーストし、これに必要なコメントを書き沿えて再びFAXで返送すると いう電子メールの手法を使えることである。
またFaxModem設定の際、届いたFAXの転送メールアドレスをセットで きる。こうしておくと、届いたFAXはメールにアイコンとして貼り付けられて 転送される。このメールを受けとったら文面に貼り付けられたFAXアイコンを クリックすると、FaxReaderが立ち上がって受信FAXを読む仕掛けになっている。 ただこの方法だと、何かの具合でメールシステムがうまく動いていない場合に 受信FAXがメールとともに消滅してしまう心配がある。
そこで、受信FAXの溜るスプールフォルダーを覗きにいって、新しい FAXが届いているとそのむねメールで教えてくれる仕掛けを shell script で 書いた。これをクロックデーモンで一定時間毎に走らせれば、FAX到着をメー ルで知ることができ、文書そのものはスプールに溜ったままなので消滅する心 配もない。このようにちょっとしたことが shell script でチョコチョコッと 書けるところが UNIX machine の強みである。簡便さを誇るMac もこのようこ とが出来ないのだけは大変不便を感ずる。
私の場合ネットワーク上の色々なマシーンの中で仕事をしていること が多いので、メールは複数のマシーン上の私宛に出すようにしてある。こうす ると仕事中は診療デスクの上のsunに「FAX届いてるよ」のメールが来る。残念 ながら sun には FaxReader がないので、FAXの中身を読むことはできない。 自宅に帰って NeXT の前に座ってから読むことになる。
診療室の sun3/50ももう5年目になり、いよいよ伊藤忠もこいつを真 面目にサポートする体制ではないようだ。今度こいつが潰れたら診療室には迷 わず NeXT を入れることになるだろう。そうすれば、ここでも FAX を読める ようになるし。sun も無いと不便だが、ネットワーク上に一台あれば充分。あ とは NeXT か Mac に限る。
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