わーくすてーしょんのあるくらし (63)
2002-12(d) 大橋克洋
< 2002.12 (c) 情報ツールとして E-mail, Web に画像会議が加わる | 2003.01 理想の電子カルテをもとめて >
2002年11月14日から3日間、医療情報連合大会が福岡で開催されま した。厚生労働省のグランドデザインなどで電子カルテの普及が推 進されていることもあってか、今回は特に電子カルテ関連のセッシ ョンや演題が多かったようです。
四国・中国・九州地区では行政の補助金による地域連携システム が盛んに行われており、昨年あたりからこのようなシステムについ て多くの発表が行われています。 行政や中核病院にとっては、囲い込みなどのメリットはあるので しょうが、そこにぶらさがる診療所にとって現状のシステムでメリ ットはそんなにあるのだろうかという素朴な疑問を抱くところです。
これらの地域連携システムや通常の病院規模での電子カルテシス テム開発は組織全体としての効率化を第一に始められるもので top down の形をとり、中央で決めたシステムを一律に現場に投入する 形です。これはシステム上やむを得ないことでしょう。
一方われわれ開業医規模での電子カルテシステム開発は、まず現 場の仕事を効率化したいという目的ではじまり、現場から bottom up の形をとります。 ただ地域連携システムのようなことになると、現状ではそのtop down 一律のものを現場のわれわれの所でも使わざるを得ないという のが、どうも現状見られるシステムのようです。
そこで理想的な地域連携システムを作るのであれば、このtop do wn と bottom up の2つの流れをどちらも生かし、合流させるべきで あると考えています。つまり中央の方では全体として効率のよいシ ステムを考え、現場では現場で効率のよいものを考える、そして両 者をガチャンと接続すれば、とても使いやすいシステムができるは ずと考えるわけです。
インフラ整備の部分に重点を置くべき
医療情報をやりとりするための Wide Area Network 部分の整備に ついては、行政ならびに中核病院の側で十分良いものを用意して欲 しい(相互接続のための接続性と効率、ランニングコストについて の経済性、セキュリテイーなどが重要)。
電子カルテは施設ごとに自由なものを使えるようにすべき
各施設で利用する部分については、規模や事情など複雑に大きく 異なるので、一律に決めてしまうと非常に使いにくいものになり医 療の効率や質が落ちる。税金のむだ遣いともなる。 従ってここは各施設に任せる自由度を与えるべきで、各施設ごと に使われる色々な電子カルテを接続して使えるべき。
電子カルテを接続するため標準化された規約を採用
異なる電子カルテシステム同士で医療情報を共通に利用するため には、広域部分(WAN)と施設部分(LAN)との接続部分で標準化された データ受け渡しの取り決めが必要となる。 医療情報という広域で利用されるデータを扱うため、地域独自の 規約ではなく全国的に利用できるものを選択すべき。
このような方向へ向かわないとわれわれに明日はありませんし、 多額の税金を払っているわれわれ国民としても、使いにくいお仕着 せの電子カルテに無駄な税金を使って欲しくないところです。
東京都も平成15年度から都内600個所の診療所を結んだ診療所 ネットワークを立ち上げ電子カルテによる医療連携を進める計画で 、あるメーカーに開発を依頼した電子カルテを配付する計画との新 聞記事がありました。これでは税金のむだ遣いになることを大変危 惧しています。
東京都が行うなら「インフラはしっかり作りました。そこに接続 する電子カルテはどうぞご自由に、好きな電子カルテをお使いくだ さい。ただし接続方法はこのような標準的方法でお願いします」と いうコンセプトでやってもらえれば、本当に地域医療に貢献できる 実用的なシステムが作れるでしょう。 ぜひ東京都に対して、このような提案をできればと思っていると ころです。行政の事業に全面反対ということではなく、多額の税金 を投入するのであれば、多くの補助事業がそうであるように一発花 火で終わってしまうものではなく、ダムや基幹道路の建設のように 永くインフラとして役立つものへ注力して欲しいからです。
一律に作られた電子カルテなどを配付してもらっても、使いにく いに決まっていますし、現場でホコリをかぶることになることが目 に見えています。なぜなら、電子カルテはユーザごとに多様な使い 勝手を提供すべきですし、現場で使いながら磨いていかなければな りません。一発勝負の一律な電子カルテで快適な診療を行うことは 不可能だからです(将来、色々な要求へ極めて柔軟に対応できる電 子カルテが出現すれば別かも知れませんが、日本の土壌はまだそこ まで洗練された考えになっていません)。
さて話は変わりますが、前号に書いたように NTT-BB の画像会議 は残念なことに現状では Windowsマシーンでしか使えないので、や むを得ず Windows マシーンを1台買うことになりました。どの機種 を買うか、まずカタログ集めからです。
松下の Let's Note も面白そうだし、Sharp の Mebius は薄いし 黒が奇麗に表示されるのも魅力的。東芝の DynaBook は初代を買っ たことがあるので今回はパス。NEC もハードは悪くなさそうだが余 り魅力を感じない。IBM も同様魅力を感じない。結局 SONY の VAI O しかないでしょう、ということになりました。画像会議だけのた めに買うのですが、嫌いな Windows マシーンを買う以上、何かそれ なりの付加価値というか理由づけも欲しいところです。
VAIO C1 ならコンパクトだし、カメラ内蔵で別途 Web cameraを買 う必要もない。画像関係が得意な機種で TV の録画機能も標準装備 で内蔵HDも60MBということで、よし「TV 録画マシーン」と割り切っ て買おうと決めました。SONY からはもっと小さな機種も発売された ばかりですが、内蔵カメラを持たないという理由で却下。 しかし小さいとはいえ、結局24万円の出費になってしまいまし た。やはりノートブックは割高です。先日サーバマシーンとして買 った dual CPU の PowerMac G4 は、これよりずっと安い。
Windows マシーンは東芝の初代 Libretto とシャープの Mebius 以来3台目。どれも最初の頃ちょっと使っただけでタンスの肥しとな りましたが、今度はどうでしょう。Windows もちょっとは使えるも のになったのでしょうか。 早速起動してみます。おお WindowsXP が載っているわけね。キー ボードの中に埋め込まれたステイック式のポインテイングデバイス は結構使い勝手がよい。ボデイがコンパクトなので画面は横長で、 縦の長さが通常の半分位だが画面を上下にスクロールできるので、 画面に関しては中程度のノートブックと同様の使い勝手を保持して いるのは有り難い。
売りの一つである内蔵カメラを試してみる。ボタン一発で写真が 撮れた。自分に向けて自画像もとれるし、相手側に向けるとちゃん と画像も反転してくれるとは賢い。早速 NTT-BB の Web siteへ行っ てチャットのお試しルームに入ってみました。 内蔵マイクではちょっと使いにくく、外付けマイクは必要そうで す。これは仕方ないでしょう。カメラも下から見上げる形だと自分 の顔のアップが見るに耐えないので、本体を何かにのせてカメラの 位置を顔の高さに近づけるとよい画像になりそう。
とりあえず初期の目的である画像会議の方は問題なさそうなこと を確かめました。よしよし、あとは探検だ、、、 TV もアンテナを繋げれば奇麗に映る。布団の中で TV を見るのに よさそう。 MacOS X の iPhoto, Itunes などに相当するアプリケーションが 標準で載っていますが、Mac の方がずっとセンスがよく使いやすい。 このように同じ目的のアプリケーションで比較してみるとよくわ かります。どうひいき目にみてもやはり Mac の方がずっと簡単で楽 しく使えます。Windows はセンスがダサいのは別として、どうして こんな使いにくいものを世の中の人は好んで使っているのでしょう 。とても不思議です。
初心者が使う場合、Mac の方がずっと簡単に使い方をのみ込める のは明らかです。私も Mac の iTunes に相当する Windows のアプ リで音楽を他のメデイアに変換するのにかなり格闘しました。何度 使ってもわかりにくく使いにくいです。
ちょっぴりの期待、あわただしさと、医療への危機感の中に2002 年も暮れていきます、、、
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