わーくすてーしょんのあるくらし (12)
1998-12 大橋克洋
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先月号の最後で少し iMac の発売に触れたところですが、予想よ り早く購入することになりました。自宅の居間に置いてある古い Mac が、今となってはいかにもスピードは遅いは、Web browser の内容をプリンターに出力しようとしてもメモリーが足りませんと 言われてしまうはで、家内から毎度こぼされるのです。
前にも書きましたが、私のスケジュール表は家庭内イントラネッ トから、Web ブラウザーでいつでも見られるようにしてあります。 医師会、産婦人科医会、その他手帳のページが真っ黒になるほど、 毎日スケジュールが入るのですが、その都度「今日は夕飯は要る の?要らないの?」を尋ねられるもお互いに面倒なことです。家内 はそれをプリント・アウトしてキッチンの壁に貼っておきたいので すが、メモリー不足でその都度いろいろ姑息なウラワザを使わねば なりません。「何とかならないの、これ」と言われてしまいます。
居間のコンピュータのユーザにはもうひとり、末娘がいます。動 物の好きな彼女はインターネットで色々な動物情報を捜し回ったり します。そのようなことで、安くて使い勝手の良いコンピュータが 手に入れば、リプレースしようと考えていたのですが、どの条件を 考えてもぴったりのコンピュータ iMac の登場ということです。
私自身は世の中で騒がれているほど、iMac のデザインに惚れて いるわけではありません。私の嗜好にピッタリというものでもあり ません。 初代 Apple ][ や、初代 Mac、初代 NeXTcube などは、とても素 晴らしく今でもベタ惚れですが。
しかし iMac は女子供にピッタリのコンピュータと思います(今 時、こういう表現は非常に危険である。差別だとかセクハラだとか で、いつ世の大半を敵に回すやも知れぬ)。姿が可愛く、シンプル で使い勝手が良い。デザインがユニークなので、早速 TV ドラマの 小道具としても登場をはじめているようです。初代 Mac も TV 画 面には、結構頻繁に登場していました。
iMac が届いて「これは女性に好まれるデザインなんだ」と言いな がら箱から出すと、家内は「そう良いとは思えないわね。私その電 気掃除機みたいな形好きじゃないの」などと言っていました。しか し、その後使いながら「奇麗ね」などと言っているので、まんざら でもないようです。
丁度箱を開けて取り出したところへ、末娘が友達を連れて帰って きました。末娘は、すでにどこかで情報を得ているらしかったので すが、友達は「わー、シースルーのコンピュータだ」と興味を示し ていました。やはり「女性に受けるコンピュータ」というのは間違 いないようです。これで Apple は今までになかった市場を開拓し たことも間違いないでしょう。
さあ、マイクロソフト社はこの市場に、どのような形で攻勢をか けてくるのでしょう。iMac 標準のWeb ブラウザーは MS 社のイン ターネットエクスプローラーになっています。このような形で満足 してくれるのでしょうか(私はすぐにネットスケープに替えてしま いましたが)。
形があどけなくても、決して iMac をあなどってはいけません。 中身は「羊の皮を着た狼」です(30年ほど前、ミニクーパーや初 代スカイラインGTに使われた言葉で、私はこの表現が大好きです)。 以前書いたように、衝動買いの液晶デイスプレイで懲りているの で、触ってみた上で良ければ iMac を買おうと秋葉原へ出かけまし た。発売からしばらくはバカ売れしているので、在庫がないのを覚 悟で T-ZONE をのぞいてみると、一階のフロアーに何台もiMac が 並んでいました。ちょっといじってみると、画面の動きがとても早 い「ややっ、これは春に購入したばかりの G3 マシーンより早いで はないか」(iMac の中身は G3 なのだから当然ではあるのだが) という印象でした。
すぐに店員を捕まえて注文。即納ではありませんでしたが、1週 間以内に届けられたのには「Apple も今回は頑張っているな」とい う印象を受けました。メモリーと VRAM を目一杯拡張してもらった ので、送料や消費税を入れて20万を少し越えてしまいましたが、 この性能でこの値段は絶対にお買い得です。
解像度を上げると画面が余り奇麗ではないなどという話も聞いて いたので VRAM の拡張は余計だったかなとも思いましたが、わずか 数千円ですので追加しました。しかし、iMac が届いて実際に使っ てみた感じでは、解像度を上げても私は不満を感じませんでした。 やはり画面が広いのは良いことです(NEXTSTEP/OPENSTEP で、昔か ら高解像度の画面に慣れているということもあるかも知れませ ん)。
iMac を急遽購入することになったのは、実はもうひとつ理由が あります。私の属する東京産婦人科医会でも、そろそろ会員へイン ターネットなどの知識やある程度の技術を普及する必要ありという ことで、会長から講習会の企画をするよう申しつかりました。
コンピュータ・アレルギーの多い先生方を前に、最初から大々的 にやるのも何なので「同好会的なものから始めても良いですか」と いうことで会長の了解をとりました。来月か再来月にでも、という 要望だったのですが、それはちょっとつらいものがあるので、3か 月ほど猶予を頂きました。準備に時間が欲しかったからです。 誰でも簡単にインターネットへ接続できて比較的安い機種をみつ け、それでデモをしたいと考えました。
私自身が Windows を好きでないという理由だけでなく、本当に 素人が「楽に」「楽しく(これが重要である)」使えるコンピュー タという点では、やはり Mac が優れていると思います。特に iMac は network を前提にデザインされたマシーンで、届いたら箱 を開けて10分位でインターネットへ接続できてしまうと聞いてい ます。本当かどうか、自分の目で確かめてみたいということもあり ます。
色々な雑誌にとり挙げられているように、iMac はネットワーク 接続を前提としたマシーンです。今までのパソコンと違って、フ ロッピーデイスク・ドライブを搭載せず、イーサネットの口を標準 で搭載するなど、そのコンセプトを表しています。
ゼロックス研究所での成果を受け継いだだけあって、Windows な どが出現するずっと前、初代 Mac の頃からネットワーク機能は標 準で考えられてきました(現在、広く普及しているイーサネットも ゼロックス社のネットワーク・システムが基になっています)。当 時 Mac に採用されたのは、イーサネットよりやや簡易型の AppleTalk という仕様でしたが、現在では Mac もイーサネットを 標準とするようになりました。
イーサネットの口の隣には電話線を繋げるモジュラージャックの 口もありますので、買ってきて箱を開け電源とネットワークを繋い だら、即使えるというのがウリの一つです。
うちの自宅には専用線に繋がったネットワークが引き回されてい ますので、ただちにイーサネットに繋ぎ、アシスタントというアプ リケーションで問われるままにネットワーク・アドレスなどを入力 することにより直ちにネットワーク端末として WWW などで米国の アップル本社などを見に行けるようになりました(というのは、 ちょっとウソで私が入力を間違えたため、2度程やりなおしをする ハメになったのですが)。
先月から超多忙で、原稿が締切に大幅に遅れています。そのよう なことで、昨日届いた iMac について、今回は詳しい印象記などレ ポートするところまではゆきませんでしたが、また次の機会に少し レポートしてみることにしましょう。
この原稿がお手元に届くのは、クリスマスの頃と思います。 クリスマス・プレゼントにはちょっと値がはりすぎますが、きっ とボーナスに合わせて iMac も沢山出ることでしょう。 OPENSTEP をもとにした MacOS X Server という OS も今年中に リリースされるはずで、私としてはこちらの方に大きな期待を寄せ ています。
最後に、前月号と同じフレーズを再度使わせてもらいましょう。 さて iMac はパソコンの世界、世の中のパソコン・ユーザのライ フ・スタイルを変えてゆくことができるのでしょうか。現在の Apple の CEO である Jobs の英断はすぐに効果を表すものと、数 年後にその価値がわかるものとあります。 私は iMacについては、比較的前者の効果がありそうだと期待し ているのですが。